朝霧の中で。

カーステレオからお気に入りの音楽を流しながら、まだ暗闇の山道をひた走る。遠くから来る対向車のアップライトで道筋を確認しながらも、ついついアクセルペダルを踏み込む。1年ぶりの解禁日である。3月1日。それは渓流を嗜む者にとっては少し特別な日だ。待ち焦がれた気持ちを胸に何人もの釣り人で渓谷は賑わう。真っ暗だった景色も徐々に山影が姿を現し、夜明けと共に、それぞれのスタートラインを目指すのである。今年はあの場所から始めようと決め込んでいたのだが、途中から全面通行止めを食らってしまい、プラン変更を余儀無くされた。渓流ではよくある話。慣れっこだと言い聞かせながらハンドルを切り適当な場所に入渓する。しばらく撃つのだが、反応という反応は無い。だがそれでいいのだ。鳥のさえずりや川の音、その中で振り抜くキャスト音。これを聞きにくるのが3月1日の儀式であるのだから。移動するにも人が多く、ついつい車を止めては声を掛け合う。この感じがまた好きなのである。まるで昨晩一緒に飲んでいたかの様な雰囲気で話しかけてくるのだから。こんなに楽しい事は、そうそう無い。今年は2河川をまたぎながらの解禁日だったのだが、本当に気持ちの良い楽しい釣行が出来て満足。釣果は満足とは言わないが、一年ぶりに友人達に会えた様なそんな気持ちにさせてくれた山と川に感謝だ。